オープン2シーターに憧れ乗っていた。と言うか4年間「持っていた」が正確だろうか。
MGBの車体にローバー製V8 3900ccエンジを詰め込み、世界2000台限定で復刻発売したクルマだった。クラシカルでタイトな室内のシート・内張りは上質なコノリーレザー、パネルにも上質なウッドが用いられていた。
元々は1800ccのボディーに3900ccのV8エンジだから、(快調に動いている時は)とにかく豪快で愉しいクルマだったし、ヴィンテージモータリストがこよなく愛したと言う「N・V・H(ノイズ・ヴァイブレーション・ハーシュネス)」を体感できた。
しかし、所有していた4年間のうち、コンピューター制御の電装系トラブルの多さに根負けし、ある日「もう嫌だ!」と突然手放す決意をした。レインジローバー、ランドローバー、モーガン+8等にも搭載された実績を持つエンジン・ミッションは頑丈だったが、狭いエンジンベイに無理矢理V8エンジンが詰め込まれたため、小さいラジエターを2機の電動ファンで必死に冷却しても、その熱が効率よく排出されず、エンジンルームは恒常的に非常な高熱になり、その熱でエンジンをコントロールする電装部品が次々にパンクしてゆくと言う悪循環を繰り返す状態だった。
加えて当時の国内ディーラーの部品価格の設定は、本国の数倍にもなる信じられない馬鹿らしいもので、例えばデスビ一式が本国価格では航空運賃込みで5万円位だったが、日本のディーラーで訊くと18万円と言った具合。もちろんパーツ類は本国の部品店から直接買っていた。
冬しか乗らないか、それなりに所得のある熱心なオーナーなら維持して行けるのだろうが、本国から部品を買っても、やはり自分には「一緒に暮らす」のは無理だった様だ。
機構的にも昔の様に燃料供給はキャブレター。電装は基本どおりの発電・点火系位しかない状態だったら、案外OKだったかも知れないが・・・。技術の進歩が仇となった感がある悲運なクルマだった。
IKONTA521 NOVER ANASTIGMAT 75mm F4.5